黒松盆栽をより美しく!芽かき・針金かけ・植え替えで魅せる根上がり樹形を極める

2025-06-10 04:25:31
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黒松盆栽をより美しく!芽かき・針金かけ・植え替えで魅せる根上がり樹形を極める

黒松盆栽をより美しく!芽かき・針金かけ・植え替えで魅せる根上がり樹形を極める

9月に開催される藤樹園フェスに向けて、今回は根上がりの黒松を魅力的な盆栽に仕立てる方法をご紹介します。芽切り後の重要な作業である「芽かき」から、針金かけ、植え替えまで、プロの技術を学ぶことで、お気に入りの素材を理想の樹形へと導くことができます。

芽かき実践:理想的な二股の枝を作る

黒松の芽かきは、木を健康に保ち、美しい樹形を作るために欠かせない作業です。特に芽切り後には、一つの場所から多くの芽が出てくるため、適切な芽を選び、不要な芽を取り除くことが重要になります。

芽かきの基本「カンタの法則」

多くの芽が出ている場合、その中からどの芽を残すべきか迷うことがあります。基本的な考え方として、「カンタの法則」では、5本の芽が出ている状態であれば、横に伸びる2本を残し、他の芽(上に出る芽、下に出る芽)は取り除くことを推奨しています。これにより、枝を「二股」で伸ばすことができ、規則正しい枝の派生を促します。理想は、家系図のように枝が分岐していくことです。

芽の選定と古葉の処理

芽を選ぶ際には、大きすぎる芽や小さすぎる芽は取り除く対象とし、中くらいの勢いの芽を2つ残すのがバランスを整える上で良いとされています。

また、古い葉(古葉)の処理も重要です。芽がない古葉は取り除くことで、見た目をすっきりとさせることができます。ピンセットで抜くか、ハサミで切る方法がありますが、ハサミで切る方が木への負担が少ないとされています。ただし、樹勢が弱っている芽の近くの古葉は、新芽への影響を考慮し、先端を短くカットする程度に留めるのが良いでしょう。

盆栽を形作る針金かけのテクニック

芽かきで枝の方向性を定めた後は、針金かけによって具体的な樹形を作っていきます。

針金の種類と選び方

盆栽の針金かけには、主にアルミ線と銅線が使われます。初心者や素材作りの段階では、何度も曲げ直しができるアルミ線がおすすめです。銅線は一度で形を決めるのに適していますが、修正が難しく、木への負荷も大きいため、ある程度の経験が求められます。

幹の動きと樹形の構想

針金をかける前に、木の足元や全体の立ち上がりをよく観察し、どのような樹形にするかの構想を練ることが重要です。例えば、今回は右流れの樹形を目指し、間延びした部分を解消しつつ、空間を埋めるようなイメージで作業を進めました。鉢合わせの際に、根の凹凸に合わせて木の向きを調整することも、樹形をより引き立てるポイントになります。

針金かけの注意点

針金は幹の根元から幹に沿ってしっかりと巻き付けていきます。針金と針金の間隔は、狭く巻くほど見栄えが良く、広めに巻くと効きやすくなり、木が割れにくいとされています。これは、曲げる位置の負荷が分散されるためです。芽を傷つけないよう注意しながら、丁寧に作業を進めましょう。

植え替えと鉢選び:全体のバランスを整える

樹形が整ったら、植え替えによってさらに全体のバランスを調整します。

根の処理と鉢の選定

根上がりの松は、根が鹿沼土に埋まっていることが多いため、丁寧に根を捌いていきます。健康的で活発な根は残し、不要な根や雑草の根は取り除きます。

鉢選びは、木の雰囲気や樹形を大きく左右します。今回は力強い印象の木であったため、縁のある楕円形の鉢を選びました。このタイプの鉢は、木全体の印象を引き締め、迫力を与える効果があります。盆栽鉢は「文山」のような時代を感じさせるものが、木の魅力をさらに引き出してくれます。

土の扱いと便利な道具

植え替えには、酸性の強い鹿沼土を使用します。根をなるべく広げて土の中に固定しやすくし、隙間なく土を詰めていきます。土を固める際には、キャンプ用の串や竹串など、先端が尖っていて硬い道具が便利です。根の間に土をしっかりと入れ込むことで、根と土の密着が良くなり、木の生育にも繋がります。

根上がり樹形の実例と将来像

完成した黒松盆栽は、コンパクトながらも可愛らしい模様木に仕上がりました。この木は根上がりでありながら、懸崖(けんがい)に限定せず、様々な樹形に応用できる可能性を秘めていることを示しています。

動画では、今回仕立てた黒松以外にも、赤松や五葉松の根上がり盆栽の実例を紹介しています。

  • 赤松の根上がり: 立ち上がりから急に流れが変わり、右流れになった樹形。古葉を適切に処理することで、枝の力強さが強調されます。
  • 五葉松の根上がり: 根が露出して荒々しく白くなっているのが特徴で、樹齢の古さを物語っています。このような根上がりは、ヤマタノオロチを連想させるような独特の面白さがあります。

これらの実例から、同じ根上がりでも、幹の動きや枝の配置、葉の処理によって様々な表情を見せることを学ぶことができます。盆栽は、これらの素材が将来どのように成長し、どのような樹形になるのかを想像しながら、時間をかけて作り上げていく芸術です。

おわりに:盆栽イベントで素材と出会う

今回ご紹介したような根上がりの黒松をはじめ、藤樹園フェスでは大小様々な盆栽素材が豊富に取り揃えられます。

藤樹園フェスは9月16日、17日、18日に開催されます。

盆栽を始める上で、「どこで買えばいいか分からない」「誰に相談すればいいか分からない」といった悩みはつきものです。しかし、このようなイベントでは、ベテランの盆栽愛好家の方々に直接相談しながら、ご自身にぴったりの木を見つけることができます。ぜひこの機会に足を運び、盆栽の奥深い世界と創造の喜びを体験してください。盆栽ライフを心ゆくまで楽しみましょう。