若き盆栽師カンタが魅せる真柏「山木」の真髄:迫力の舎利を活かす仕立て術と盆栽界の未来

2025-06-10 02:30:46
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若き盆栽師カンタが魅せる真柏「山木」の真髄:迫力の舎利を活かす仕立て術と盆栽界の未来

迫力ある舎利が魅力の真柏を仕立てる

今回手掛けるのは、中品の真柏(シンパク)。その最大の特徴は、見る者を圧倒する豪快な舎利(シャリ)です。自然の中で育まれた山木ならではの力強さが宿るこの真柏を、盆栽師・廣田寛太氏がさらに魅力的な姿へと仕立てていきます。

現在の正面は特定の角度に設定されていますが、人によっては別の角度を好む可能性もあります。しかし、廣田氏は足元の見え方や水吸いの動き、そして舎利の迫力を最大限に引き出すため、現在の角度を正面と判断。特に舎利の持つ圧倒的な存在感を際立たせ、水吸いの動きを活かした流れを返させるような構想で作業を進めます。この真柏は葉性も非常に良く、伸びた枝を丁寧に剪定しながら全体の形を整えていきます。

作業工程:舎利を活かすための緻密な仕立て

この真柏を仕立てる上で、廣田氏はいくつかの重要なポイントを挙げます。

1. 事前の構想と枝の整理

まずは差し枝と樹冠(頭)の位置を決め、全体の構想を固めます。特にこの木は、以前に呼び接ぎが行われているため、そのつなぎ目に無理な負担をかけないよう細心の注意を払いながら、差し枝を強調するために内側に寄せる配置を意識します。また、裏枝も既存の枝を活かして配置。長い枝は下の枝棚と重ならないよう、細い枝を生かして形を作っていきます。

不要な葉や長く伸びすぎた葉を丁寧に抜き、枝の整理を進めることで、全体の骨格が明確になります。

2. 針金掛けと枝の配置

剪定が完了すると、いよいよ針金掛けの工程に入ります。まず太い針金で主要な枝を寄せ、全体の骨格を形成。この際、幹には極力太い針金を巻かないように配慮します。枝を細かく内側に寄せていく作業は非常に集中力を要し、絡まった銅線を避けながら丁寧に巻き付けていきます。経験を積む中で、より効率的な針金掛けの方法を学びながら、理想の樹形へと近づけていきます。

3. ジャッキを用いた矯正

真柏の枝は当初、正面から見た際に全体がやや離れて見える部分がありました。これを幹に寄せて、より一体感のある樹形にするため、ジャッキを用いた矯正を試みます。傷つけないよう網戸用のゴムで保護し、ジャッキを慎重に固定。この作業によって、木全体がより引き締まり、見事な共作が完成します。

4. 植え替え作業

仕立ての最終段階は植え替えです。鉢に収めるために、鉢からはみ出す部分の舎利を切断する判断も必要です。撮影時期(2月)を考慮し、根への負担を最小限に抑えながら作業を進めます。植え替えの適期は3月末頃であり、昨年の植え替え履歴から根の切り詰めも最小限に留められました。

作業を終えた真柏は、想定通りの姿に仕上がりました。角度を起こし、枝棚が明確に分かれ、舎利の存在感が際立っています。現在は葉の量が少ない部分もありますが、これから次第に増えていくことで、さらに迫力ある姿へと成長していくでしょう。

大盆栽まつり:盆栽文化の継承と未来へ

動画の制作中には、日本の盆栽文化を支える重要なイベント「大盆栽まつり」に関する情報も共有されました。

第40回大盆栽まつり開催と出店募集

毎年5月3日から5日にかけて大宮で開催される「大盆栽まつり」は、今年で記念すべき第40回を迎えます。これは大規模な販売イベントであり、盆栽愛好家にとっては見逃せない機会です。盆栽Qでは、この伝統ある祭りを次の世代へと繋ぎ、さらに発展させるため、出店者の募集を行っています。

出店を通じて、自身の盆栽を販売するだけでなく、多くの愛好家との交流を深めることができます。友人やサークルの仲間と協力して出店することで、盆栽の楽しみ方は一層広がるでしょう。盆栽を「売る」という経験は、自身の木を評価する一つの指標となり、新たな木を購入するサイクルを生み出し、盆栽界全体の活性化に貢献します。盆栽Qは、イベント運営のデジタル化を推進し、盆栽界の未来を支える新たな試みに挑戦しています。

盆栽界の活性化への提言

廣田氏はこの機会に、盆栽界の現状と未来についても深く言及しています。盆栽の販売と購入の循環は、愛好家の能力向上だけでなく、盆栽界全体の発展に不可欠です。自分の作った木が評価され、それが新たな創作活動の資金となる。この「買って、作って、売る」という循環こそが、盆栽文化を支え、活性化させる原動力となります。

廣田氏は、愛好会などで出店する風習がさらに増えること、そしてイベント運営側も常に新しい試みに挑戦し続けることの重要性を訴えます。高齢化が進む盆栽界において、若手盆栽師や愛好家が積極的に活動し、新たなアイデアを発信していくことが、盆栽の未来を切り拓く鍵となります。

廣田氏をはじめとする若手盆栽師たちの活躍と、盆栽界全体で取り組む新たな試みが、日本の伝統文化である盆栽のさらなる発展に繋がることを期待せずにはいられません。