真柏の盆栽に捻れた舎利を強制的に作る方法:真っ直ぐな幹を魅力的に変える

2025-06-10 03:35:22
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真柏の盆栽に捻れた舎利を強制的に作る方法:真っ直ぐな幹を魅力的に変える

真柏(シンパク)の盆栽は、その幹の曲線美や、枯れた部分を白く漂白した「舎利(シャリ)」の造形美が魅力です。しかし、幹が真っ直ぐな真柏に魅力的な舎利を作るのは難しいと感じる方もいるかもしれません。今回は、幹が真っ直ぐな木に意図的に捻れた舎利を作る「強制捻転」という特殊な方法について、具体的な工程とポイントを詳しく解説します。

「強制捻転」が必要な理由

盆栽における舎利は、通常、幹の流れに沿って自然に形成されます。しかし、幹が真っ直ぐな木の場合、舎利も真っ直ぐに伸びてしまい、変化に乏しく面白みに欠けることがあります。このような木に動きと奥行きを与えるために、人工的に捻りを加える「強制捻転」の技術が用いられます。

作業で使用する道具

強制捻転の作業では、主に以下の道具を使用します。

  • 彫刻刀: 学校で使うようなものでも代用可能ですが、盆栽用として販売されている彫刻刀も精度が高くおすすめです。
  • 盆栽鋏: 昌国や悦郎といった専門の鋏があると作業がはかどります。
  • 安全手袋: 刃物を使う作業のため、ナイロン製やケブラー製の安全手袋を着用し、怪我のリスクを減らすことが重要です。

「強制捻転」の具体的な工程

1. 水吸い(ミズスイ)を残して幹を削る

水吸いとは、木が水を吸い上げる生きた部分のことです。この作業では、真っ直ぐな水吸いを切らず、その間を空けるように幹を削っていきます。

  • 削る範囲: 最初は水吸いを完全に繋げず、少しずつ広げて削り、後々繋げることを目指します。
  • 幹の下部: 根腐れを防ぐため、幹の下部は削りすぎずに少し残します。

2. 舎利の道筋をつける

彫刻刀を使い、将来の舎利の形を導くように斜めに削っていきます。水吸いは真っ直ぐに残しつつ、その周りの部分を丁寧に削り込んでいきます。

3. 水吸いの重要性

水吸いは、木が生きていく上で不可欠な部分です。舎利作りでは、特に以下の点に注意が必要です。

  • 枝との関連: 水吸いが繋がっている枝は、その水吸いを切ってしまうと枯れる可能性があります。作業中にどの枝に水吸いが繋がっているかを確認し、慎重に作業を進めます。
  • 舎利と枝の位置関係: 舎利は必ず枝の上を通るように誘導します。枝の下に水吸いがなくなると、その枝は枯れてしまうため注意が必要です。
  • 水吸いの可視性: 盆栽の美学として、正面から水吸いが見えるように配置することが重要です。最終的に一本の水吸いになるため、必ず見える位置にくるように意識して作業を進めます。

4. 危険箇所と対策

作業中、枝が折れたり、刃物で手を滑らせたりする危険性があります。ナイロン製やケブラー製の手袋を着用し、常に安全を最優先に作業しましょう。

舎利の成長と加工

削り込みを行った部分の水吸いは、時間の経過とともに盛り上がってきます。この盛り上がりを利用して、将来的に大きな「板舎利(イタシャリ)」として加工することが可能です。まさに「舎利を育てる」という感覚で、長期的な視点を持って盆栽と向き合うことが大切です。

作業後のケアと注意点

  • 傷口の保護: 作業直後に「カットパスター」などで傷口を保護する必要はありません。むしろ、修復が進んでしまうと強制捻転の効果が薄れる可能性があります。
  • 石灰硫黄合剤の塗布: 舎利を白く漂白するために「石灰硫黄合剤」を塗布しますが、作業後すぐに塗ってはいけません。葉の先端が茶色く変色したり、木が薬液を吸い込んで枯れてしまう原因になります。表面が完全に乾いてから塗布するようにしましょう。

今後の作業と剪定の適期

強制捻転の作業は一度で完結するものではなく、時間をかけて複数回行うことがあります。今回の作業後、暖かくなる来年4月頃に再度追い込む可能性もあります。

また、11月は真柏の剪定の適期とされています。この時期に剪定を行うことで、葉が密になりすぎる「杉葉化」を防ぐ効果も期待できます。

今回の「強制捻転」は、真っ直ぐな真柏に新たな表情と価値を与えるための高度な技術です。適切な知識と道具、そして根気を持って取り組むことで、あなたの盆栽はさらなる魅力を放つことでしょう。