盆栽愛好家にとって、6月は年間作業の中でも特に忙しい時期の一つです。春の植え替え時期と並び、この時期にしかできない大切な手入れが数多く存在します。今回は、松柏類から雑木まで、6月に行うべき主要な盆栽作業について、具体的なポイントを解説します。
6月は盆栽の「もう一つの繁忙期」
盆栽の年間作業は、季節ごとに特徴があります。春の植え替え時期は広範囲にわたりますが、6月はまさに「今だけ」の作業が集中する時期です。この時期を逃さず手入れを行うことで、盆栽の健康を保ち、美しい樹形を維持することができます。
松柏類の手入れ
トショウ・シンパク・石化桧
トショウ、シンパク、石化桧は、6月に植え替えが可能な樹種です。特にトショウは、植え替えで枯れてしまうケースが多いため、根捌きは慎重に行う必要があります。この時期の植え替えが枯れにくく、成功しやすいとされています。
また、これらの樹種は芽吹きが良いため、芽摘みや剪定も重要です。
- 芽摘み: 伸びすぎた芽を取り除くことで、棚のように芽数を増やし、密度を濃くします。トショウは芽吹きが旺盛なので、たくさん摘んでも問題ありません。
- 剪定: 飛び出た枝や伸びた枝は、輪郭を整えるように剪定します。葉を切る際は、変色を防ぐために軸だけを切るのがポイントです。
赤松・黒松の芽切り
6月は芽切りが始まる時期です。赤松の方が黒松よりも早く芽切りを行います。
- 赤松: 6月後半頃が目安です。赤松は比較的優しい木なので、黒松ほど葉を短くすることにこだわらなくても良いとされます。
- 黒松: 赤松より少し遅れて芽切りを行います。力強く作りたい場合は、葉を短く保つことが重要です。
芽切りの応用:一斉芽切り法
一般的には、下の芽が弱く、上の芽が強い傾向があるため、弱い芽から先に切るのが基本です。しかし、一度に全ての芽を切る「一斉芽切り」を行う方法もあります。
- 下の芽: 1mm程度残して切る。
- 中間の芽: 2mm程度残して切る。
- 上の芽: 3〜4mm程度残して切る。
このように残す長さを変えることで、芽が枯れるまでのタイミングに誤差が生まれ、下の芽から先に反応し、バランス良く二番芽が出てくることを促します。
雑木類の手入れ
カエデ・ケヤキの葉刈り
カエデやケヤキは、6月に葉刈りができます。葉刈りの目的は、大きな葉を減らし、内側に細かい芽を出させること。これにより、より細かい枝を作ることができます。
- 方法: 葉を全て取り除くこともできますが、外側の葉を残す方法もあります。木の健康状態を確認しながら行いましょう。年間3回ほど行える場合もあります。
- 剪定: 葉刈りと同時に、輪郭を整える剪定も行います。
ウメモドキの剪定
ウメモドキは、この時期に多くの芽が伸びます。基本的には伸びた枝を剪定することで樹形を整えます。実を楽しみたい場合は、実が付く部分を確認しながら剪定を行うようにしましょう。樹形を優先する場合は、思い切った剪定も可能です。
長寿梅の剪定と黄変葉の除去
長寿梅も6月の大切な作業の一つです。
- 徒長枝の剪定: 徒長した勢いのある枝は剪定します。枝をある程度伸ばしてから切ることで、別の場所から芽吹きを促し、枝数を増やすことができます。
- 「とや」になった葉の除去: 「とや」とは、季節の変わり目に葉が自然に黄変して生まれ変わる現象です。長寿梅も古い葉が黄色くなっていたら、取り除いて風通しを良くしましょう。
- ヤゴ枝の処理: 株立ちの樹形を目指す場合を除き、幹の形を隠してしまう不要なヤゴ枝は切除します。これにより、上の枝の健康も保たれます。
チリメンカズラのバリカン刈り
チリメンカズラは、6月の手入れの中でも特に重要です。この時期の作業が、今後の樹形に大きく影響します。
- バリカン刈り: 伸びた枝を輪郭に沿ってバリカンで刈り込むことで、短い小枝の先端に葉を集中させ、樹形をコンパクトに保ちます。心配な場合は、先端だけを剪定するだけでも効果があります。
- 特徴: チリメンカズラは非常に丈夫で、芽吹きも良い樹種です。蔓性ですが、剪定によって太い幹を作ることも可能です。
- 剪定時期の重要性: 4月頃に枝を切ると、その後に葉が「とや」に入ってしまう可能性があるため、6月に行うのが最も適しています。
- 剪定後の植え替え: 葉を刈り込むことで木が小さくなり、この状態であれば植え替えも可能です。
まとめ
6月は松柏類の植え替えや芽切り、雑木類の葉刈りや剪定など、多岐にわたる盆栽作業が集中する時期です。それぞれの樹種に合わせた手入れを適切に行うことで、盆栽は健康に育ち、一年を通して美しい姿を見せてくれます。動画を参考に、ご自身の盆栽に合った手入れをぜひ実践してみてください。適切な時期に適切な作業を行うことが、盆栽の成長と美しさを保つ秘訣です。