【赤松】7月でも太い幹を安全に曲げる!プロが明かす保護とねじりの盆栽術

2025-06-10 03:00:45
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【赤松】7月でも太い幹を安全に曲げる!プロが明かす保護とねじりの盆栽術

日本赤松(アカマツ)の幹を曲げる作業は、通常6月が適期とされています。しかし、果たして7月でもこの重要な作業は可能なのでしょうか?今回は、太い赤松の幹を7月に曲げる挑戦を通じて、その秘訣と注意点を詳しく解説します。

7月の幹曲げは可能か?

一般的に、赤松の幹曲げは6月が最適とされます。7月に入ると、樹皮と形成層が剥がれやすくなるため、作業が困難になると考えられがちです。しかし、適切な保護と技術を用いることで、7月でも幹を安全に曲げることが可能です。

今回の作業では、まず盆栽園で購入した樹齢5〜6年程度の太い赤松を使用します。この樹は山で採取された素材であり、幹が非常に硬いのが特徴です。そのため、より一層慎重な作業が求められます。

幹曲げの準備:葉の整理と徹底した保護

幹を曲げる前に、まず前年の葉を丁寧に掃除します。今回は、作業後に芽切り(芽を摘む作業)は行いません。その理由は後述します。

最も重要なのは、幹の保護です。幹が折れるのを防ぐためには、「保護6割、曲げる作業4割」という意識が大切です。以下の手順で幹を徹底的に保護します。

  1. アルミ線の設置(背中合わせ): 曲げる幹の背中に沿わせるように、2.5mmのアルミ線を2本密着させます。この線は足元から曲げる部分までしっかりと沿わせます。
  2. ラフィアの巻き付け: アルミ線を幹に密着させた状態で、ラフィアを巻き付けます。今回は細いラフィアを10本束ねて使用しました。ラフィアを巻く方向は、幹をねじる方向と同じ(今回は右回転)にします。ラフィアと幹、アルミ線の間に隙間ができないよう、強く密着させて巻くことが重要です。特に、幹の切り口など、折れやすい部分には注意を払い、隙間なく保護します。
  3. 仕上げのアルミ線巻き付け: ラフィアの上から、さらに3mmのアルミ線を巻きます。このアルミ線も、ラフィアと同じ回転方向で、幹に沿って隙間なく巻き付けていきます。土に差し込む部分と幹の長さの1.5倍を目安に、少し長めに準備すると良いでしょう。曲げる部分にアルミ線が確実に当たるよう、計算しながら巻くことが重要です。

幹曲げの核心:ねじりと道具の活用

幹曲げの最も重要なポイントは「ねじりながら曲げる」ことです。幹をそのまま曲げると繊維が断裂し、割れてしまう可能性が高まります。しかし、幹をねじることで繊維がねじれ、折れにくくなります。ただし、7月という時期にねじると樹皮が剥がれやすいため、前述のラフィアとアルミ線による徹底的な保護が不可欠です。この保護により、ねじった際に樹皮が形成層に密着し、剥がれるのを防ぎます。

太い幹を曲げる際には、人の力だけでは不十分な場合があります。そのため、以下の道具を活用します。

  1. 鉄の棒: 最初の大きな曲げを加える際に使用します。長い棒を使うことで、てこの原理が働き、少ない力で幹を曲げることができます。幹にしっかりと固定し、曲げる部分に力を集中させます。幹が曲がる音を確認しながら、少しずつ作業を進めます。
  2. ジャッキ: 鉄の棒だけでは難しい微調整や、より強い力を必要とする場合にジャッキを使用します。ジャッキを使うことで、一人でも安定して幹を曲げることが可能です。目標とする曲がり具合まで、ゆっくりと力を加えていきます。幹が割れる音が聞こえたら、すぐに作業を中断してください。

曲げた幹が元に戻らないよう、作業中に固定用の銅線とゴムを使って形状を維持します。銅線が幹に食い込まないよう、ゴムで保護することが重要です。

作業後の管理と将来の樹形

幹曲げ作業が終わったら、適切なアフターケアが必要です。

芽切りは行わない

今回は幹に大きな負担がかかる作業を行ったため、芽切りは行いません。幹を曲げることで、樹が水分や栄養を吸い上げる道が一時的に阻害されている可能性があります。この状態で芽切りを行うと、新しい芽が出ずに樹が枯れてしまうリスクが高まります。過去に、この作業と芽切りを同時に行い、樹を枯らしてしまった経験があるため、特に注意が必要です。

枝の整理と針金かけ

幹曲げ後、幹の新しい曲線に合わせて枝の針金かけを行います。枝をねじることで、より自然で望ましい位置に配置することができます。針金同士が交差しないよう、丁寧に巻き付けてください。不要な枝は、ジンにはせず、少し残して自然に枯れるように処理します。

完成形を想像する

今回の作業で、幹がほぼ180度近くまで大きく曲がりました。現在は枝が混み合って見えますが、来年以降に芽切りを行い、枝を整えることで、理想の盆栽としての姿が現れてきます。幹の持つ荒々しい肌や独特の曲がりを活かし、魅力的な盆栽へと育てていきましょう。

まとめ

7月という時期でも、赤松の太い幹を安全に曲げることは可能です。重要なのは、以下のポイントを徹底することです。

  • 徹底した保護: アルミ線とラフィアで幹を隙間なく保護し、樹皮と形成層の分離を防ぐ。
  • ねじりながら曲げる: 幹の繊維をねじることで、折れを防ぐ。
  • 適切な道具の活用: 鉄の棒やジャッキを使い、無理なく力を加える。
  • 作業後の注意: 樹に負担をかけすぎないよう、芽切りは避ける。

太く間延びした赤松も、今回の方法を試すことで、魅力的な盆栽へと生まれ変わらせることができます。特に畑で育った樹は比較的幹が柔らかく、作業がしやすい傾向があります。山採りなど幹が硬い樹でも、適切な保護と時間をかければ、素晴らしい曲がりを実現できるでしょう。この技術が、皆さんの盆栽制作の一助となれば幸いです。