視聴者から託された赤松盆栽:常識を覆す大胆な剪定
今回の記事では、視聴者の方からお預かりした大切な赤松盆栽の改作についてご紹介します。これまでの動画では真柏の話題が多かったですが、今回は赤松の魅力と、その潜在能力を最大限に引き出すための大胆な剪定術に焦点を当てます。
この赤松は、根元の幹模様は非常に良いものの、先端の枝が真っ直ぐに伸びており、樹形全体のバランスを損ねていました。特に問題視されたのは、「閂枝(かんぬきえだ)」と呼ばれる、幹に対して十字に伸びる枝が存在していたことです。盆栽において、このような枝は樹形を悪く見せるため、通常は避けられます。
頭となる枝の創造と「閂枝」の除去
本来の樹形を理想に近づけるため、私たちは既存の真っ直ぐな頭の枝を切除し、横に伸びる枝の中から新しい頭となる枝を選定する決断をしました。特に、上部にあった閂枝を新しい頭として活用するという、一見すると大胆な選択です。
この決定に至るまでには、いくつかの正面を検討しました。仮の正面を設定し、幹の幅が狭い、奥から枝が出ている、あるいは特定の枝が邪魔をしているといった欠点を洗い出しました。その結果、幹の内側から伸びる「お腹から出た枝」や、樹形を複雑にする不要な枝も思い切って切除しました。まさに「一番大事な枝を切る」という常識を覆す判断が、新しい樹形創造の第一歩となったのです。
幹模様を引き出す整形と未来への展望
主要な枝の切除後、樹形がはっきりと見え始めました。特に注目すべきは、これまで閂枝として存在していた枝を新しい頭とすることで、幹の表情が豊かになった点です。
次に、残った枝に針金をかけ、樹形を整える作業に入ります。この際、複数の枝が分岐している部分に針金を巻く「鉢巻き掛け(はちまきがけ)」といった手法も用いました。奥の枝を上段に配置し、頭となる枝の向きを調整するなど、細部にわたる工夫を凝らしました。
五葉松に比べて葉が長い赤松は針金掛けが難しい面もありますが、根気強く作業を進めました。まだ完成形とは言えませんが、枝が短い「一芽」に切り詰められ、方向性が定まっていなかった状態から、左流れの樹形を目指すことが明確になりました。幹の「コケ順(こけじゅん)」、つまり幹の根元から先端にかけての自然な細り具合も良くなり、将来の姿が楽しみです。
現在はまだ庭木のようにも見えるかもしれませんが、今回の作業で赤松盆栽の骨格がしっかりと作られました。今後、枝を丹念に育てていくことで、この木は素晴らしい盆栽へと成長していくことでしょう。幹が荒れた時(より風格が増した時)が、この赤松盆栽の真の魅力が花開く時だと確信しています。